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ブータン国王の日本への思いとは何か?国会演説と「龍の話」をご紹介

ブータン国王 日本
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エリザベス女王の国葬のニュースでブータン国王の姿を数年ぶりに拝見しました。

天皇陛下と同じバスに乗り合わせて一緒にウエストミンスター寺院に着いたようです。

ブータン国王は大の親日家で、日本には特別な思いや期待を抱いています。

それは、東日本震災後の日本訪問時に行った国会演説や「龍の話」からも伝わってきます。

今回は、国会演説と「龍の話」を抜粋してご紹介します。

そこから、ブータン国王の日本への思いも読み取ることができると思います。

ブータン国王の日本への思いとは何でしょうか、それでは一緒に見ていきましょう。

 

ブータン国王の日本への思いとは何か?

 

現ブータン国王のプロフィール

ブータンの現国王は、ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク第5代国王になります。

簡単にプロフィールを見てみましょう。

・1980年生まれ、2022年現在42才。
・2006年、第5代国王として即位。
・学位は政治学修士(オックスフォード大学モードリン・カレッジ)
インドへの留学経験があり、母国語のゾンカ語の他に、英語とヒンディー語
が話せる。
・2011年5月、王妃と結婚。
・2011年11月、王妃とともに日本を訪問。
国会の衆議院本会議場で演説を行う。東日本大震災の被災地である福島県を
訪問。

オックスフォード大学に学び、インドへの留学経験もある教養の高い国王であると推測されます。

後でご紹介しますが、国会の演説の内容を見ても、良い面だけとは言え日本を客観的に評価されており、バランス感覚のある立憲君主であると思います。

 

ブータン国王の日本への思いとは?

ブータンは人口86万人(2022年)のヒマラヤにある国で、中国・インドという大国と国境を接しています。

ブータンの歴史を見ると、1949年までイギリスの保護下にあり、中国(清)の干渉を排除しながら国家を維持してきた経緯があります。

現在では中国、インドの影響をうけながら独立を維持しています。

おそらくブータンは、「大国に挟まれた小国の生き方」で日本を参考にしていると思います。

日本は中国・ロシア・アメリカに挟まれた(比較的)小国で、その国家運営や大国間の政治的な舵取りは立ち位置的な類似性もあり参考になるはずです。

ブータンは日本に親近感を持ち、大の親日国として知られていますが、その理由は簡単には次の通りです。

  • ともにイギリスの影響を受けた立憲君主国である
  • 皇室・王室間の交流、経済協力等を通じて友好関係にある
  • 仏教文化の価値観が共通している

ブータン国王は日本の優れた資質を認め、日本に深い親愛の情と敬意を抱き、グローバル化した世界でリーダーシップを発揮し続けてほしいとの期待をお持ちです。

ブータン国王の国会演説

2011年11月、ブータン国王は王妃とともに日本を訪問し、国会の衆議院本会議場で演説を行いました。

動画をご覧いただくと、約12分の短い演説ですが日本人にとっては感動的な演説になっています。

「日本と日本人はどういう存在であるのか」「友好国にとって日本は何を期待されているのか」、こういうことが良くわかる演説です。

私たちは「他者をとおして自分自身を知る」ことがあります。

ブータン国王の演説は日本の良質な面を客観的に評価し、この第三者の発言は友好的な感情をもとに行われていますが、私たち日本人に感動を与え勇気づけるものになっています。

私も、この演説に感動した一人です。

以下では演説の中から印象的な発言を引用し、私の感想を加えました。

いかなる国の国民も、決してこのような苦難(東日本大震災の壊滅的な地震や津波)を経験すべきではありません。
しかし仮に、このような不幸からより強くより大きく立ち上がれることができる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。

ブータン国王は日本の歴史をよくご存じで、注意深く客観的に見ているようです。

1900年代で見ると、大きな地震では関東大震災、阪神・淡路大震災があり、何より太平洋戦争の敗戦による国土の壊滅的な打撃から立ち上がり、日本は何度も復興を遂げてきました。

このような歴史からブータン国王が日本に寄せる信頼と期待を読み取ることができます。

我々ブータンに暮らす者は常に、日本国民を親愛なる兄弟姉妹であると考えてまいりました。家族、誠実さ、そして名誉を守り、個人よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちによって、両国民は結ばれています。

ブータンは近代化を進める一方で、チベット仏教が国家宗教のようにしっかりと根付いています。

日本は宗教が生活を規定することはないのですが、仏教文化を背景にした世俗道徳はすたれておらず、その仏教文化の価値観がブータンに似ているためブータン国王は日本に親近感を持つようです。

ブータン国民は常に、公式な関係を超えた特別な愛着を日本に抱いてまいりました。私は、我が父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化へと導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時、開発途上地域であったアジアに自信とその進むべき道への自覚をもたらし、以降、日本の後について世界経済の最前線に躍り出た数多くの国々に希望を与えてきました。日本は過去も、そして現在もリーダーであり続けます。
このグ
ローバル化した世界において日本は、技術と革新の力、勤勉さと責任感、強固な伝統的価値観における模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。

明治維新から日本は近代国家への道を歩み始めますが、近代国家の設計図を描き、西欧の文化・文明を取り入れ産業の育成を図り、軍事的にも陸海軍を強化していきます。

アジアにある国家が、当時の列強の支配下に入らず独立した状態で近代化していく具体的な実例を示しました。

明治維新以来の日本の評価は、称賛と非難が相半ばします。

ブータン国王も、日本が太平洋戦争で近隣国に甚大な苦しみや被害を与えたことは知っているはずですが、ここでは日本の良質な面に言及しています。

ブータンは「国民総幸福量」を主張する国であり、「国内総生産(GDP)」を優先する経済至上主義とは距離を置いています。

グローバル経済は弱肉強食の資本主義経済が主流ですが、そこに日本のような仏教文化の価値観を持つ国がリーダーシップを取り、人間の幸福を図りながら経済を発展させる方向付けをしてほしいとのブータン国王の期待感が見えます。

皆様は、日本及び日本国民のすばらしい資質を示されました。
他国であれば、国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして
悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は、最悪の状況下でさえも、静かな尊厳、自信、規律、心の強さをもって対処されました。
文化、伝統及び価値にしっかりと根付いた、このような卓越した資質の組み合わせは、われわれの現代の世界で他に見出すことは、ほぼ不可能です。すべての国がそうありたいと切望しますが、これは日本人特有のもの、特性であり、不可分の要素です。このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年、数十年で失われることはありません。

東日本大震災の際、被災者が冷静に規律を保って行動する姿は各国からも称賛され、民度が高いと評価されました。

この発言は日本人の資質をほめ過ぎているかもしれませんが、日本人特有の資質と経験の組み合わせから成り立っている行動様式だと思います。

  • 資質:仏教文化を背景とした世俗道徳の浸透(規律、協調、自己抑制など)
  • 経験:地震等災害が多い国で人々が助け合って災害を切り抜けてきた経験

この経験は日本人に伝わる知恵のようなものであり、つまり「自分一人が助かろうとせず、みんなで協力して落ち着いて行動する、助けを待つ」ことで助かる確率が高くなることを日本人は経験や見聞から知っています。

数年に1度は日本のどこかで自然災害が発生し、ニュースやテレビ番組でも災害時の教訓を再認識する機会があるため、このような災害時の行動様式が日本人のなかに定着していると考えられます。

 

ブータン国王の「龍の話」

国会演説の後、ブータン国王と王妃は福島県を訪問しました。

福島県のある小学校で小学生たちに語ったのが「龍の話」です。

通訳を入れながらの5分ぐらいのお話しですが、震災から時間の経っていない福島に訪問するのは、日本に寄り添う気持ちがなければできないことです。

お話しから引用します。

龍は何を食べて大きくなるのかを知っていますか?
龍は、経験を食べて大きく成長していくのですよ。
私一人一人の中に「人格」という名の龍が存在しているのです。
その龍は、年を取り、経験を食べるほど、強く、大きく、なっていきます。
人は、経験を糧にして、強くなることができるのです。
そして何よりも大切なことは、自分の龍を鍛えて、きちんとコントロールすることです。
この「龍」の話を、私がブータンの子どもたちにする時には、同時に、「自分の龍を大切に養いなさい、鍛錬しなさい」ということを言っています。
わがままを抑えることや、感情をコントロールして生きることが大切なのです。

短いお話しですが、古典的な人格主義の訓えで含蓄があります。

「震災というつらい経験も糧にして人格は鍛錬される」、「自分の人格を鍛え、一喜一憂しないで平常心で生きる」、このようなメッセージは小学生だけでなく大人の心にも響いたようです。

 

まとめ

ブータン国王の日本への思い、いかがでしょうか?

ブータン国王は、日本の良質な面をよく理解し、大きな期待をかけていることが分かります。

国会演説を見ても、短く簡潔な表現で日本の美点を表現し、私たちが返って「そうか、日本はこういう存在だったのか」と再認識するところがあります。

まさに、「他者をとおして自分自身を知る」です。

「龍の話」も短く含蓄のある話なのですが、今の日本の教育の場では伝えにくい内容かもしれません。

2つとも良いお話しなのですが、日本に対する期待が大き過ぎるところもあります。

国内総生産(GDP)の増大を図った結果、日本も他の先進国同様の問題を抱えています。

ブータンの唱える国民総幸福量は、物質的な豊かさだけでなく精神的な豊かさも求める点で納得できる考え方です。

ブータン国王の国会演説や「龍の話」は仏教文化の価値観を基礎にしており、日本人に分かりやすく、心に響く内容になっています。

10年以上前の演説ですが、色褪せません。

最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。