素顔はアイドルのような容姿と雰囲気の5代目市川團子、端正な顔立ちで美しい貴公子役がよく似合う8代目市川染五郎。
将来が期待される若手歌舞伎役者であり、注目度も高くなっています。
年齢もほぼ同じで子役からの共演も多く、「同じ市川を名乗っているので親戚かな?」と思う方も多いと思います。
家系図で確認すると、この2人には血縁関係はなく親戚ではありません。
また、同じ「市川」を名乗っていますが同門でもありません。
では、親戚でない市川團子と市川染五郎はどんな関係なのでしょうか?
家系図を調べると2人はそれぞれ名門の宗家の跡取りであり、宗家の歴史と伝統を背負う立場であることが分かります。
「市川團子と市川染五郎は血縁関係がなく、年齢の近い宗家の跡取り同士で、お互いを高め合う好敵手のような関係」こんな姿が浮かび上がります。
どのような家柄に生まれ、どのような歴史を継承する役者であるのか、家系図も見ながら確認していきましょう。
市川團子と市川染五郎の関係を家系図で説明
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まず家系図を見て分かるのは、5代目市川團子と8代目市川染五郎には血縁関係がなく親戚ではありません。
名跡で同じ「市川」と名乗るものの、同じ家(屋号)つまり同門でもありません。
では、2人はどのような関係にあるのでしょうか?
家系を調べてみると、2人の明治時代の先祖は9代目市川團十郎の高弟であり、兄弟弟子の関係にあることが分かります。
祖先が同じ師匠の門弟として修練を積み名優となった高弟同士の関係であることは、現在の子孫である2人の関係に通じるものがあります。
市川團子と市川染五郎の家系図
市川團子は市川猿之助家(澤瀉屋)の家系に属し、市川染五郎は松本幸四郎(高麗屋)の家系に属します。
ここで簡単に「屋号」と「名跡」の説明をします。
- 屋号:江戸時代は武士階級以外は苗字を許されず、他の階級は苗字に代わるものとして「屋号」を名乗りました。
- 名跡:簡単に言うと歌舞伎役者の芸名です。ただの芸名ではなく、歴代が演じた演目の役柄の積み重ねから芸格の高さや権威も合わせ持ちます。
では、関係が分かるように家系図を整理しましたので見てみましょう。
(※同じ家でも、名跡の苗字に当たる部分が同じとは限りません)
初代市川猿之助と7代目松本幸四郎は9代目市川團十郎の門弟であり、兄弟弟子の関係にあります。
市川猿之助家は明治から始まる新興の一門、松本幸四郎家は江戸時代中期に成立し市川團十郎家と縁の深い古い名門です。
初代猿之助も7代目幸四郎も技量の優れた名優であり、9代目團十郎の高弟として市川一門で重きをなしました。
両家は血縁関係がありませんが、明治期の祖先以降も歌舞伎界で重きをなす有力一門同士の関係にあります。
現在の関係で言えば、5代目團子と8代目染五郎は13代目團十郎の門弟ではありません。
市川猿之助家と松本幸四郎家はそれぞれ独立した一門であり、5代目團子と8代目染五郎は一門の宗家の跡取りになります。
5代目 市川團子の家系
まず、当代5代目 市川團子(いちかわ だんこ)が属する市川猿之助家(澤瀉屋)を簡単に説明します。
それから本人のプロフィールと家系を順に見ていきましょう。
市川猿之助家(澤瀉屋)
澤瀉屋(おもだかや)の屋号を名乗る市川猿之助家は明治時代に初代市川猿之助が創設した比較的歴史の新しい家です。
歌舞伎界の名門は江戸時代から続く古い家も多いのですが、澤瀉屋は歴史が新しくとも進取の精神にあふれる「スーパー歌舞伎」の創設家であり、現在の歌舞伎界で有力な一門となっています。
ここでは、宗家の名跡を見ていきます。
(宗家)
- 市川猿之助(いちかわ えんのすけ)
- 市川段四郎(いちかわ だんしろう)
- 市川猿翁(いちかわ えんおう)
- 市川團子(いちかわ だんこ)
- 市川亀治郎(いちかわ かめじろう)
- 市川中車(いちかわ ちゅうしゃ)
それぞれの名跡を簡単に説明すると、
- 市川猿之助は、新興の名跡ですが高い芸格を有します。
- 市川段四郎は、猿之助に匹敵する澤瀉屋の二枚看板の名跡です。
- 市川猿翁は、猿之助・段四郎の名跡を譲った者が名乗る隠居名の位置づけです。
- 市川團子は、若手役者の名跡であり芸格は比較的高くありません。
- 市川亀治郎は、幼少期に襲名する名跡となっています。
- 市川中車は、澤瀉屋の縁者が名乗る同門格の名跡です。
5代目 市川團子のプロフィール
歌舞伎界の若き獅子 市川團子さんが語る気づきの日々「毎日が思うようにはいかない」
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簡単にご紹介すると、
- 屋号 澤瀉屋(おもだかや)
- 生年月日 2004年1月16日
- 本名 香川 政明(かがわ まさあき)
- 襲名歴 1. 5代目 市川團子
- 出身地 東京都
- 祖父 3代目 市川猿之助
- 父 9代目 市川中車(香川照之)
父の香川照之は事情があり3代目市川猿之助の実子でありながら、長く歌舞伎界とは関わりのない境遇でした。
後述のとおり香川照之は46才で歌舞伎界に転身しますが、父の転身に伴って8才で5代目市川團子を襲名し、宗家の血縁者として歌舞伎役者の道を歩み始めます。
父の転身がなければ歌舞伎役者とは違う人生を送っているはずで、数奇な運命とも言えますが、当代4代目猿之助の後継者として市川猿之助を襲名する可能性は非常に高いと思います。
(祖父)3代目 市川猿之助
3代目市川猿之助は、古典歌舞伎とは一線を画す現代風歌舞伎を目指しました。
宙乗りや派手な立ち回りなど、客受けする娯楽性の高い「猿之助歌舞伎」は保守的な歌舞伎役者や評論家から酷評されるものの、見応えのある舞台として一般顧客の評価も高く歌舞伎の客層を広げました。
1986年には「スーパー歌舞伎」を創設し、演目「ヤマトタケル」を初演しました。
スーパー歌舞伎では、古典歌舞伎の要素である踊り、立ち回り、見得、ケレン(観客を驚かせるような演出)、隈取りなどの演出を基本としながらも、中国の古典や日本の古代神話など古典歌舞伎にはない題材を脚本化しました。
華やかな衣装、現代的な照明と舞台装置、雄大な劇伴音楽などで世界観を表現し古典歌舞伎と現代劇を融合させ、「物語性を持ち、スピード感のある、視覚に強く印象を与える」現代風歌舞伎を確立しています。
スーパー歌舞伎は古典歌舞伎の既成概念を打ち破り、歌舞伎界に革命を起こしました。
「これは歌舞伎ではない」という評論家の意見も見られましたが、歌舞伎に興味のなかった若者たちが舞台に足を運び、若い歌舞伎ファンは確実に増えました。
(従伯父-いとこおじ)4代目 市川猿之助
5代目團子の父 照之と4代目猿之助は従兄弟(いとこ)の間柄になるので、團子から見て猿之助は従伯父(いとこおじ)になります。
当代4代目市川猿之助は、伯父である3代目市川猿之助が創設した「スーパー歌舞伎」の継承者。
古典歌舞伎では立役、女方、舞踊に至るまであらゆる役柄をこなし高い技量を持つ役者です。
一方、スーパー歌舞伎では伯父の進取の精神を受け継ぎ更に現代性を推し進め、国内海外で絶大な人気を誇る漫画作品「ONE PIECE」を舞台化するなど「スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)」として革新的で独創的な作品を生み出しています。
また、現代劇俳優としてドラマ、映画、舞台、時代劇でも活躍し、従兄(いとこ)である俳優の香川照之(9代目市川中車)とは「半沢直樹」等のドラマやバラエティー番組の共演も多くあります。
無類の読書家として知られますが、役者として舞台では虚構の世界を演じるため、実生活では宗教、哲学、歴史など現実世界に立ったものに強く惹かれるそうです。
読書によって虚構と現実のバランスを取り、精神を安定させているようです。
(父)9代目 市川中車(香川照之)
【出演】市川中車(香川照之)、歌舞伎座で俳優復帰https://t.co/xoM3SbohDE
東京・歌舞伎座「十二月大歌舞伎」の昼の部「鞘當(さやあて)」に出演。因縁ある武士2人が斬り合おうとするところを止める、留男(とめおとこ)と呼ばれる茶屋亭主を演じた。 pic.twitter.com/WhxiCbgKj4
— ライブドアニュース (@livedoornews) December 6, 2022
父は3代目市川猿之助、母は女優の浜木綿子。
両親は3才の時に離婚し、その後は母に育てられました。
20代から俳優として活躍し、テレビドラマ、時代劇、映画に出演多数し、確かな演技力と存在感で高い評価を得ています。
両親の離婚後は父の3代目猿之助とは絶縁状態で歌舞伎界とはほぼ無縁でしたが、父との和解後は2011年に9代目市川中車を襲名、46才で歌舞伎役者となります。
歌舞伎役者がテレビ、映画、ミュージカル、舞台に現代劇俳優として活躍する例は少なからず見られますが、この逆で現代劇俳優が歌舞伎役者として活躍した例は私の知る限りありません。
現代劇俳優では評価が高く実績があるものの、歌舞伎役者への転身はなかなか難しいようです。
「歌舞伎の家に生まれた者が、家業を継ぎ血を守る」と46才の新参者は並々ならぬ覚悟と決意で歌舞伎界に身を置いています。
8代目 市川染五郎の家系
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8代目市川染五郎のプロフィールを簡単に見てみましょう。
- 屋号 高麗屋
- 生年月日 2005年3月27日
- 本名 藤間 齋(ふじま いつき)
- 襲名歴 1. 4代目松本金太郎
・ ・2. 8代目市川染五郎 - 出身地 東京都
- 祖父 2代目松本白鸚
- 父 10代目松本幸四郎
- 妹 松田美瑠
市川染五郎は松本幸四郎家の家系に属しますが、家系については詳しい記事がありますので、是非こちらをご覧いただければと思います。
市川團子と市川染五郎の関係は好敵手
2人の関係を整理すると、
- 5代目市川團子と8代目市川染五郎には血縁関係がなく親戚ではありません。
- 市川猿之助家と松本幸四郎家はそれぞれ独立した一門であり、5代目團子と8代目染五郎は一門の宗家の跡取り同士で好敵手の関係になります。
一見すると関係性がなさそうですが、2人とも子役として活躍し多くの共演があります。
2人の関係性が分かるニュース記事がありますので、発言を引用すると
- ライバルであり、仲間
- 大親友でもある
- 小さい頃から共演していたので、先輩・後輩感がない
- 歌舞伎はふたりで演じる演目が結構あるので、それを一緒にできればと思う
- 一緒に舞台に出続けたいし、この関係が変わらずあればいいと思う
(出典:歌舞伎界を担う市川染五郎×市川團子 )
2人は仲の良い同期の若手役者で、厳しい芸事の世界でライバルとして競い合いながらも仲間として助け合い切磋琢磨している姿が浮かんできます。
この2人の仲の良さ・親近感は相性が良いこともありますが、おそらく宗家の跡取りとして家と歴史の重圧を背負っていく者同士の連帯感があるからだと思います。
松本幸四郎家は300年以上の歴史があり、市川猿之助家も新興とは言え140年の歴史があります。
歴代の継承者の名を汚さず、宗家として芸格の高い名跡を受け継いでいかねばならない。
その立場にある者しか理解できない重圧と孤独を共有するので、2人の連帯感と親近感が強く結びついていると考えられます。
まとめ
5代目市川團子と8代目市川染五郎は血縁関係がなく親戚ではありません。
同じ「市川」を名乗るものの、家系図で分かるように親戚でなく別々の家に属し同門でもありません。
市川團子は140年の歴史を有する市川猿之助家の宗家跡取りあり、市川染五郎は300年以上の歴史を有する松本幸四郎家の宗家跡取りです。
2人は非常に親しい関係ですが、ただの若手役者同士の仲の良さだけではなく、宗家跡取りとして家門の歴史と伝統を継承する者しか分からない重圧と孤独を共有しています。
そこから生まれる連帯感が、市川團子と市川染五郎の関係を強く結びつけています。
父の世代である4代目市川猿之助と10代目松本幸四郎も共演が多く、非常に親しい間柄であることはよく知られています。
やはり、その関係も宗家跡取りとしての連帯感を見ることができます。
厳しい芸事の世界ですが、市川團子と市川染五郎には「役者の華」があり、優れた資質を持っています。
市川團子はスーパー歌舞伎の継承者であり、市川染五郎は正統的な歌舞伎を背負う継承者として、将来性への期待は大きく歌舞伎界を背負う名優になる可能性は大いにあります。
お二人の大成を見守りたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。